原発問題を取り上げた映画『希望の国』

原発問題を取り上げた映画『希望の国』

『希望の国』

2012年10月20日に公開された『希望の国』は、2011年3月11日に発生した東日本大震災という日本で観測された中で観測史上最大の規模の地震が起こり、甚大な被害となり大きな津波で沢山の人たちの命が奪われただけではなく、今も事態は収束していない福島原発事故が起きてしまいました。真っ向から原発問題を取り上げたのが、園子温監督の『希望の国』です。3.11の原発を描くドラマはこの映画が初めてのことです。そし福島原発事故が起こり原発の問題は未だ解決がされていない現在進行形ですが、あえて震災後の原発問題をダイレクトに扱った作品です。

希望の国を撮影した理由

震災後の原発問題はまだ終わっていません。現在進行形で続いています。2014年6月23日東京電力福島第1原発では、汚染水対策が本格化し始めています。昨年度2013年よりも作業員の数は約6000人と倍増して、構内には重機が行き交う様子は巨大な土木工事現場の様子です。でもそこは土木工事現場ではなく、放射線量がとても高い水準のまさに命がけの現場であり、作業員の方々は汚染水との闘いを構内では行なっています。現場付近の線量は最大で毎時1ミリシーベルトにも達する過酷な環境ですが、そこには事故当時のがれきが散乱している影響で線量が高い現場になっています。

無関心が一番いけない

監督の園子温さんが被災者の話を聞き始めたのは、3.11が発生して4ヵ月後の8月でした。まだ震災の傷跡が生々しい状態ではありましたが、震災直後の報道からだんだん報道されることも少なくなっていた時期でもありました。このまま原発問題を風化させてはいけない。という思いと、文学や他のアートの分野では原発問題について発信がされているけど、日本の映画からは発進されているものが特になかったこともあって「自分がやらなくては」との思いで脚本作りのための聞き取りを始めていきました。

「なぜ、今福島を映画化するのですか?」という問いを沢山聞かれたといいます。園監督はそのことに対して「無関心が一番いけない」と言います。そして今後とも原発問題を扱った映画をつくるべきだとも話しています。その例としてアメリカ映画の「ハート・ロッカー」をあげています。「ハート・ロッカー」はイラクに駐留しているアメリカ軍爆発処理班の苦悩を描いた反戦映画ですが、その当時まだ進行中だったアメリカ軍のイラク駐留を決めた政府を批判する内容を、ハリウッドのメジャー製作会社がつくりアカデミー賞作品賞候補にもなりました。なぜ日本人は臆病なのか。進行中のことだからこそ、撮らなくてはという想いがありました。『事故を風化させてはいけない』だからこそ、2012年の間に『希望の国』を撮りあげて、2012年に公開することにこだわった作品です。

あらすじ

【原発事故に翻弄される、どこにでもいる家族の物語】舞台は東日本大震災から数年後の日本の長島県(架空)です。小野一家は酪農家として営みながら、小野泰彦(夏八木勲)と妻の千恵子(大谷直子)、それに息子の洋一(村上淳)とその妻いずみ(神楽坂恵)と、どこにでもあるごく平凡ではありながらも、とても満ち足りた生活を営んでいました。そしてすぐの隣に住む鈴木健(でんでん)と妻のめい子(筒井真理子)。そして息子のミツル(清水優)は恋人ヨーコ(梶原ひかり)と遊んでばかりいるので、息子に文句を言うことはあっても、ごく普通に仲良く生活していました。

長島県沖の東方沖で大地震が起こり、大地震の影響で原子力発電所が事故を起こします。警戒区域に指定されたのは、原子力発電所から半径20KM圏内です。酪農を営んでいる小野一家の家は、警戒区域の指定から外れましたが、道路を一本隔てた鈴木家は強制的に避難させられます。

かつておきた東日本大震災の原発事故が起きた際に、日本政府の不誠実な対応を思い出した泰彦は、息子夫婦の洋一夫婦を避難させます。そして原発事故の状況は刻一刻と悪化していく中で、避難区域も広がり遂に、小野家を含んだ地域も避難区域に指定されました。

泰彦は住みなれた自分の家にそのまま住み続けます。避難区域に指定されたことで、町役場から志村(菅原大吉)や加藤(山中祟)が訪れて避難するように説得するため訪れますが、避難することに応じません。息子の洋一も町役場からの要請を受けて、父を説得しますが避難することを頑なに断ります。泰彦は妻の智恵子が痴呆を患っているため、今までとは環境の異なる場所に避難生活を送るというストレスを与えたくない、それに自分達の先祖代々住み続けていたこの土地以外にどこに自分達の行き場があるのだ。と言います。

小野家を自衛隊による強制退去が迫る中で、酪農家を営んでいるため飼育していた牛を殺処分するよう言い渡されていた牛たちを猟銃で射殺して泰彦がとった行動は…

洋一の妻いずみは妊娠中ですが、放射能恐怖症になっているため洋一とともに、安全な場所を探し求めています。どこにいったとしても、放射能の危険があることがわかっていながらも、目に見えない放射能の恐怖を抱えるいずみでした。

鈴木家の息子ミツルと恋人のヨーコは、瓦礫だらけになっている海沿いの街で、未だに消息がつかめていないヨーコの家族を探して歩き続きていました。家族が津波に流されてしまい行方不明になっているため、家族の生存が絶望的になる現実を以前の街とはまったく異なる様の瓦礫だらけの街を歩きながら、現実が突きつけられるようでした。

原発の事故を境にして、今まで当たり前のように送っていた生活が一変してしまった家族。そして原発事故のために突然今までの家から別の場所へ避難生活を送ることを余儀なくされ、原発に翻弄されたどこにでもいる家族。そんな人々に明るい明日、明るい未来は訪れるのでしょうか?!

キャスト

小野泰彦…夏八木勲
映画デビューは1966年「骨までしゃぶる」1939年12月25日生まれ。慶応大学文学部仏文学在学中に、文学座研究所に入所。映画や舞台など幅広い分野で活躍中。
小野智恵子…大谷直子
映画デビューは1968年岡本喜八監督の「肉弾」のヒロインでデビュー。高校在学中にオーディション合格を機に俳優の道へ。1人2役を演じた「ツィゴイネルワイゼン」ではキネマ旬報主演女優賞など、他で確かな演技力で活躍。
小野洋一…村上淳
映画デビューは1993年橋本以蔵監督の「ぷるぷる天使的休日」でスクリーンデビュー。1973年7月23日生まれ。スクリーンデビュー前は男性誌のファッションモデルとして活躍。映画・舞台・テレビ・DJなど幅広い分野で活躍。
小野いずみ…神楽坂恵
映画デビューは2007年「遠くの空に消えた」でスクリーンデビュー。1981年9月28日生まれ。2004年にグラビアアイドルとしてデビューした後、女優に転進。プライベートでは園子温監督と2011年11月11日に入籍。園子温監督作品はこの作品で4作品目。
鈴木ミツル…清水優
1985年2月5日生まれ。園子温監督作品は2006年「気球クラブ、その後」から出演。この作品で4作品目。
ヨーコ…梶原ひかり
子役として7歳の時につかこうへい劇団の舞台でデビュー。1992年12月21日生まれ。園子温監督「冷たい熱帯魚」で主人公の娘美津子を演じて注目を集める。園子温監督作品はこの作品で2作品目。
志村(町役場職員)…菅原大吉
1960年4月14日生まれ。水谷龍二作・演出の舞台に数多く出演。テレビ映画のほか、妻の竹内郁子と芝居ユニットを立ち上げ幅広く活躍中。
加藤(町役場職員)…山中崇
1978年3月18日生まれ。東京都生まれで、映画のほか舞台、CM、テレビドラマにも多数出演で活躍中。
産婦人科医…河原崎建三
1943年11月3日生まれ。子役として前進座舞台「真夏の世の夢」で初舞台。NHK大河ドラマのほか、幅広い分野で出演を果たし今まで出演したテレビドラマは100本を超える。映画作品にも多数出演。
鈴木健…でんでん
1950年1月12日生まれ。舞台「星屑シリーズ」などで活躍するほか、独自のたたずまいと存在で映画でも活躍。
鈴木めい子…筒井真理子
1962年10月13日生まれ。早稲田大学在学中に鴻上尚史主宰の「第三舞台」に参加、1982年に「第三舞台」で初舞台。それ以降、第三舞台のほとんどの作品に出演。映画では1994年山口巧監督「男ともだち」で主演デビュー。
田中(警官)…大鶴義丹
1968年4月24日生まれ。高校時代から芸能活動を開始、スクリーンデビューは大学生の時映画『首都高速トライアル』。2013年に震災後の福島県南相馬市を舞台にした「裸のいとこ」で脚本監督作品が公開。
寺山(警官)…松尾諭
1975年12月7日生まれ。映画やテレビドラマなど幅広く活躍中。
島田(避難する住民)…吉田祐健
1957年3月28日生まれ。三重県出身。映画などで活躍中。
橋本(避難する住民)…:並樹史朗
1957年9月21日生まれ。千葉県出身。文学座研究所へ第18期生として入り、1983年「おしん」の竜三役で人気が出る。現在は早くから重要な役回りまで幅広く活躍。
ガソリンスタンドの店員…米村亮太朗
1977年8月4日生まれ。熊本県出身。劇団ポッドール所属。第5回公演から全ての公演に出演。
水島(避難所の人)…吹越満
1965年2月17日生まれ。青森県出身。1984年から劇団WAHAHA本舗に参加し、ソロパフォーマーとしても活躍。園子監督作品は2作目の出演。
谷川(避難所の人)…伊勢谷友介
1976年5月29日生まれ。ほんの少しの出演ながらも、避難所でのシーンはインパクトを残している。
TVの中の司会者…:手塚とおる
1962年6月27日生まれ。蜷川幸雄演出「黒いチューリップ」で俳優デビュー。劇団☆新感線、野田地図など多くの舞台で客演として出演するほか、テレビドラマ映画と活躍中。
TVの中のお笑いコンビ…ラブレターズ
2009年4月に結成。キングオブコント2011で初の決勝進出となり結果は7位。
トークイベントのゲスト…田中壮太郎
1970年6月23日生まれ。1996年劇団俳優座に入団後、俳優座の舞台のほか映画やテレビドラマに出演。
三島(洋一の同僚)…本城丸裕
1954年7月8日生まれ。以前の芸名は本城裕で活動。
荒井(洋一の同僚)…深水元基
1980年1月20日生まれ。ファッション誌のモデルとして活躍した後に俳優に転進。テレビドラマ、映画などで活躍。
林(洋一の同僚)…大森博史
1954年1954年12月19日生まれ。学習院初等科から大学まで学習院。高円宮憲仁親王と同級生、徳仁皇太子の5年先輩にあたる。フランス研究会から演劇部へ。
ひろみ(妊婦)…占部房子
1978年1月9日生まれ。千葉県立船橋二和高校在学中に、全国高校演劇コンクール最優秀賞受賞作品に出演。主演映画「バッシング」は第58回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され注目となる。
検問所の警官…井上肇
1961年3月29日生まれ。テレビドラマや映画のほか、楽器の生演奏と芝居をコラボさせた創作活動などの分野でも活躍中。
TVの中の官僚…堀部圭亮
1966年3月25日生まれ。1986年お笑いコンビ「パワーズ」の2代目パートナーとしてデビュー。1996年映画「弾丸ランナー」より映画作品への出演が増えている。
海辺の父親…田中哲司
1966年2月18日生まれ。数多くの演出家の舞台に出演。文藝役者として名バイプレーヤーとして活躍。最近は映画やテレビドラマなどにも出演。